ハードウェア(電気・電子回路・機械制御・構成部品・論理設計・消費電力)
テクノロジ系 / コンピュータシステム
この単元の範囲
大分類2「コンピュータシステム」中分類6「ハードウェア」は、直前の中分類5「ソフトウェア」(OS・OSSなど)から視点を切り替え、コンピュータを「電子回路・機械・部品」という物理的な側面から扱う単元である。シラバス本文では【目標】として「①コンピュータの構成部品である電気・電子回路の考え方を理解する」「②機械を電子的に制御する場合の代表的な方法の特徴を理解する」「③構成部品の特性,論理設計の基本的な留意事項を理解する」「④組込み機器の開発における消費電力の重要性を理解する」の4点が掲げられ、これを受けて「(1)電気・電子回路」「(2)機械・制御」「(3)構成部品及び要素と実装」「(4)論理設計」「(5)消費電力」の5小分類が続く(直後は大分類3中分類7「ユーザーインタフェース」に移る)。ITパスポートでも論理回路の基礎(AND・OR・NOTゲート)には触れるが、基本情報レベルでは制御方式の種類、部品の実装形態、設計時のトレードオフ、消費電力という組込み開発を意識した論点まで踏み込むのが到達目標になる。
1. 電気・電子回路
コンピュータ内部の論理回路は、AND回路・OR回路・NOT回路という基本ゲートの組み合わせで構成される。これに加えて出題対象となるのが、NOT(否定)とAND(論理積)を組み合わせたNAND回路である。NAND回路はAND回路の出力を反転させたものだが、実はNAND回路だけを組み合わせればAND・OR・NOTのすべてを作り出せるという性質を持ち、集積回路の設計で好んで使われる。
回路には、入力に応じて出力が一意に決まる組合せ回路と、過去の状態を保持できる順序回路があるが、その順序回路の基本部品がフリップフロップである。フリップフロップは1ビットの情報(0か1)を保持し続けられる回路で、コンピュータのレジスタやメモリの最小単位として使われる。たとえば「照明のスイッチを1回押すとON、もう1回押すとOFFになる」動作は、フリップフロップが状態を記憶しているからこそ実現できる。
論理回路の動作は論理式(AND・OR・NOTを数式のように表したもの)と真理値表(入力の組み合わせごとに出力を一覧にした表)で表現される。また、電圧の高い状態を「1」、低い状態を「0」に対応させる正論理と、その逆に電圧の低い状態を「1」に対応させる負論理という2つの捉え方があり、同じ回路でもどちらの論理を採用するかで信号の意味が変わる点に注意が必要である。
2. 機械・制御
機械を電子的に制御する方式は、大きく2つの考え方に分かれる。ひとつは、あらかじめ決めた手順どおりに一方向で処理を進めるオープンループ制御(開ループ制御)で、たとえば電子レンジで「500Wで2分」と設定すれば、庫内の実際の温度を確認せずに指定時間だけ加熱し続ける。もうひとつは、実際の出力結果をセンサーで測定し、それを入力側にフィードバックして修正しながら制御するクローズドループ制御(閉ループ制御)で、エアコンが室温センサーの値を見ながら運転を強弱させる動作がこれにあたる。この「出力を測定して入力に戻す」仕組み自体をフィードバック制御と呼び、クローズドループ制御の中核をなす考え方である。
あらかじめ定めた順序に沿って工程を進める制御はシーケンス制御と呼ばれ、洗濯機が「給水→洗い→すすぎ→脱水」の順に自動で工程を進める動作が代表例である。また、モーターの回転速度やLEDの明るさを調整する際によく使われるのがPWM(Pulse Width Modulation)制御で、電圧のON/OFFを高速に繰り返し、そのON時間の割合(デューティ比)を変えることで、あたかも電圧を細かく変化させたかのような効果を電子的に作り出す。
3. 構成部品及び要素と実装
電子回路を構成する代表的な部品として、電流を一方向にしか流さない整流作用を持つダイオード、電流を流すと発光するLED(発光ダイオード、ダイオードの一種)、電気信号の増幅やスイッチングを行うトランジスタがある。これらの部品を1枚の基板・チップ上に集積したものがIC(集積回路)であり、集積される素子数がさらに多いものをLSI(大規模集積回路)、それをさらに上回る超高密度な集積回路をVLSI(Very Large Scale Integration)と呼ぶ。集積度が上がるほど、同じ機能をより小さく・低消費電力で実現できる。
もう一つ重要な部品がFPGA(Field Programmable Gate Array)である。製造時に回路構成を固定してしまう集積回路とは異なり、FPGAは購入後にユーザー自身が内部の論理回路構成を何度でも書き換えられる点が特徴で、試作段階や少量生産、仕様変更が見込まれる組込み機器などで活用される。
4. 論理設計
論理回路を実際に設計する際には、単に「動けばよい」のではなく、処理速度などの性能、部品点数や配線のしやすさといった設計効率、そして製造・調達にかかるコストという複数の観点をバランスさせながら回路設計を行う必要がある。たとえば同じ機能を実現するにも、部品点数を増やして高速化を優先する設計と、部品点数を減らしてコストを抑える設計とではトレードオフが生じ、製品の用途(大量生産する民生機器か、性能最優先の産業機器かなど)に応じて最適な設計方針は変わってくる。
5. 消費電力
スマートフォンやIoT機器のようにバッテリーで動作する組込み機器では、性能だけでなく消費電力をどこまで抑えられるかが製品の実用性を左右する。同じ処理性能を持つ回路でも、消費電力が大きければバッテリー駆動時間が短くなり、発熱によって回路の信頼性や寿命にも悪影響を及ぼす。そのため組込み機器の開発では、部品選定や回路設計、さらには前述のPWM制御による電力供給の最適化など、設計の初期段階から消費電力を重要な制約条件として考慮することが求められる。
本資料はIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公表する「基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2」(大分類2「コンピュータシステム」中分類6「ハードウェア」、印刷ページ-23-)に基づく自作の解説テキストである。
- シラバス本文の小分類構成・用語例を参照しつつ、解説文・具体例は本資料著者(nomuraya-dojo)の独自作成である
- 末尾の「オリジナル演習問題」はIPA過去問を模倣・転記せず、本資料著者が独自に作成したものである
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- 著者: 本資料著者(nomuraya-dojo)
考えてみよう
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問1
NAND回路に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。
ア NAND回路はAND回路とOR回路を直列に接続した回路であり、単独では論理回路を構成できない
イ NAND回路はAND回路の出力を反転させた回路であり、NAND回路の組み合わせだけでAND・OR・NOTのすべての論理を実現できる
ウ NAND回路は1ビットの情報を保持し続けるための順序回路であり、フリップフロップの一種である
エ NAND回路は電圧の高低を「1」「0」のどちらに対応させるかを決める、正論理・負論理の識別回路である
解答:イ
解説: NAND回路はNOT(否定)とAND(論理積)を組み合わせた回路で、AND回路の出力を反転させたものである。NAND回路のみを組み合わせることでAND・OR・NOTのすべての基本論理を作り出せるという性質(万能ゲート)を持つため、集積回路の設計で広く利用される。ウはフリップフロップの説明、エは正論理・負論理の説明であり、いずれもNAND回路そのものの説明ではない。
問2
エアコンが室温センサーの測定値を見ながら、設定温度に近づくように運転の強弱を自動調整する仕組みを説明する制御方式として、最も適切なものはどれか。
ア シーケンス制御であり、あらかじめ決めた順序で工程を進めるだけで出力の測定は行わない
イ オープンループ制御であり、出力結果を確認せずに一方向で処理を進める
ウ クローズドループ制御であり、出力結果をセンサーで測定して入力側にフィードバックする
エ PWM制御であり、電圧のON/OFFを高速に切り替えることで消費電力を抑える
解答:ウ
解説: エアコンの温度制御のように、出力(室温)の実測値をセンサーで取得し、それを入力側に戻して制御量を修正し続ける仕組みはクローズドループ制御(フィードバック制御)である。これに対しシーケンス制御はあらかじめ定めた順序で工程を進める制御、オープンループ制御は出力を確認せず一方向に処理を進める制御であり、いずれも室温を継続的に測定して調整する動作の説明としては不適切である。PWM制御はON/OFFの時間比率で電圧を疑似的に変化させる技術であり、温度制御の仕組みそのものを表す言葉ではない。
問3
モーターの回転速度をなめらかに調整するために、電圧のON/OFFを高速に繰り返し、ON時間の割合(デューティ比)を変化させる制御方式はどれか。
ア シーケンス制御
イ フィードバック制御
ウ オープンループ制御
エ PWM(Pulse Width Modulation)制御
解答:エ
解説: PWM制御は、電圧をON/OFFする周期の中でON時間の占める割合(デューティ比)を変化させることで、実効的な電圧・電力を細かく調整する制御方式であり、モーターの回転速度やLEDの明るさ調整などに広く用いられる。シーケンス制御は順序どおりに工程を進める制御、フィードバック制御は出力を入力側に戻して修正する制御、オープンループ制御は出力を確認せず一方向で処理する制御であり、いずれも「ON時間の割合を変える」という説明には該当しない。
問4
FPGA(Field Programmable Gate Array)の特徴として、最も適切なものはどれか。
ア 製造時に回路構成が固定され、購入後にユーザーが回路構成を変更することはできない
イ 購入後にユーザー自身が内部の論理回路構成を繰り返し書き換えられる
ウ 電流を一方向にしか流さない整流作用を持つ部品であり、論理回路の構成要素ではない
エ 複数のIC・LSIを1つの基板上にはんだ付けして固定した回路基板である
解答:イ
解説: FPGAは、製造後にユーザー自身が内部の論理回路の構成を何度でも書き換えられる集積回路である。この再構成可能性により、試作段階での設計変更や少量生産、仕様変更が見込まれる組込み機器などで活用される。アは製造時に回路が固定される集積回路の説明、ウはダイオードの説明であり、いずれもFPGAの特徴ではない。
問5
組込み機器の開発において消費電力を重視すべき理由として、最も適切なものはどれか。
ア 消費電力は製品のデザイン性のみに影響し、機能や信頼性には関係しない
イ 消費電力が大きいほどバッテリー駆動時間が延び、発熱による悪影響も減少する
ウ 消費電力を抑えることはバッテリー駆動時間の確保や発熱による信頼性低下の防止につながるため、設計の初期段階から考慮すべき制約条件である
エ 消費電力は製造コストにのみ影響し、製品の性能や寿命とは無関係である
解答:ウ
解説: バッテリーで動作する組込み機器では、消費電力の大小がバッテリー駆動時間や発熱による回路の信頼性・寿命に直結する。そのため消費電力は、部品選定や回路設計、制御方式(PWM制御による電力最適化など)を含めて、設計の初期段階から考慮すべき重要な制約条件として扱われる。イは事実と逆であり、消費電力が大きいほど駆動時間は短くなり発熱の悪影響も増す。