採点されません。匿名です。 間違えることは学習の一部です。読むだけでもかまいません。

経営戦略マネジメント(経営戦略手法・マーケティング・目標評価・経営管理システム)

ストラテジ系 / 経営戦略

この単元の範囲

基本情報技術者試験のシラバスは、大分類8「経営戦略」の最初の中分類として「経営戦略マネジメント」を置いている。ここでは、企業がどのような方向に成長するかを決める全社レベルの戦略から、個別事業でどう競争に勝つかの戦略、顧客に価値を届けるマーケティング、戦略を数値目標に落として評価する仕組み、そして戦略実行を支える情報システムまでを一気通貫で扱う。用語数が非常に多いため、丸暗記ではなく「誰が・何を決めるための道具か」という観点でグルーピングして覚えるのが効率的である。シラバスでは小分類として「1. 経営戦略手法」「2. マーケティング」「3. ビジネス戦略と目標・評価」「4. 経営管理システム」の4つが定義されている。

1. 経営戦略手法

1-1 経営戦略(全社の土台となる考え方)

経営戦略の出発点は、企業がなぜ存在し何を大切にするかを言語化した企業理念である。成長の方向性としては、既存事業の延長ではなく新しい事業領域に進出する多角化があり、複数事業を組み合わせることで単独では出せない相乗効果を生むシナジー効果を狙う。生産量が増えるほど1個あたりのコストが下がる規模の経済、逆に事業の種類を広げるほど共通資源を使い回せてコストが下がる範囲の経済は、多角化の合理性を説明する代表的な概念である。市場や技術の変化に対応するには、新しい価値を生み出すイノベーション、組織を新しい状態へ円滑に移行させるチェンジマネジメント、環境変化に応じて自社の経営資源・組織能力そのものを組み替え続ける力であるダイナミックケイパビリティが求められる。他社の優れた手法を分析・比較して自社改善に活かすベンチマーキング、その結果見出される最良の実践例をベストプラクティスと呼ぶ。近年重視される社会的責任の観点としては、国連が採択した持続可能な開発目標SDGs、資源を廃棄せず再利用し続ける経済モデルであるサーキュラーエコノミー(循環経済)がある。

1-2 全社戦略(複数事業をどう運営するか)

複数事業を持つ企業が全体最適を図るための概念群である。競合他社に対して優位に立てる源泉を競争優位と呼び、生産や販売の経験を積むほど単位コストが逓減する現象を経験曲線という。顧客満足を意味するCS(Customer Satisfaction)は事業運営の評価軸として定着している。子会社・関連会社を含めて企業集団全体を最適化するグループ経営、他社にまねされにくい自社の中核的な強みであるコアコンピタンス、自社の強みでない業務を外部に委託するアウトソーシング、他社を買収・合併して事業を拡大するM&A(Mergers and Acquisitions)、自社単独ではなく取引先・提携先を含めた事業生態系を意味するエコシステム、他社との業務提携であるアライアンスは、いずれも自社の限られた経営資源を補完し合う手段である。複数事業の組合せを資金配分の観点で管理するPPM(Product Portfolio Management)、間接部門の機能を集約し複数事業で共有するシェアードサービス、新規事業を立ち上げるベンチャービジネス、その資金調達手段の一つであるインターネット経由で不特定多数から出資を募るクラウドファンディングも全社戦略に関わる用語である。

1-3 事業戦略(個別事業でどう競争に勝つか)

個々の事業単位が市場でどう戦うかを決めるのが事業戦略であり、シラバスでは「①競争戦略」「②事業戦略手法」に分けられている。競争戦略の代表がマイケル・ポーターの基本戦略で、コストを最も低く抑えて勝負するコストリーダーシップ戦略、他社にない独自性で勝負する差別化戦略、特定の市場セグメントに絞り込む集中戦略の3つに分類される。強者が弱者の戦略をまねて優位性を消す同質化戦略、競争の激しい既存市場(レッドオーシャン)を避けて競争のない新市場を切り拓くブルーオーシャン戦略、環境・社会・ガバナンスを重視する企業に投資するESG投資も競争戦略の周辺概念である。事業戦略を立案するための分析手法としては、強み・弱み・機会・脅威を整理するSWOT分析、経営資源が価値・希少性・模倣困難性・組織体制の4条件を満たすかを評価するVRIO分析、原材料調達から販売までの一連の活動のどこで価値が生まれているかを分析するバリューチェーン分析、市場と製品の新旧の組合せで成長の方向性を検討する成長マトリクス(アンゾフのマトリクス)がある。

2. マーケティング

2-1 マーケティング理論

顧客に価値を届ける活動全般を支える理論群である。自社・競合・顧客の3視点で市場を分析する3C分析は、その手前で行う市場調査(マーケティングリサーチ)の結果を整理する枠組みとして使われる。市場を細分化し(セグメンテーション)、狙う顧客層を定め(ターゲティング)、自社の立ち位置を明確にする(ポジショニング)STP分析、複数の商品属性の組合せから顧客が何を重視するかを測るコンジョイント分析、母集団から標本を抽出して調査するサンプリング、アンケートなどの質問法、行動を見て把握する観察法、条件を変えて反応を比較する実験法は、いずれも顧客理解のための調査手法である。顧客視点で課題を発見し解決策を試作・検証するデザイン思考、事業の前提となる仮説を可視化するアサンプションマップ、顧客に提供する独自の価値を言語化するバリュープロポジション、ブランドが顧客に約束する価値を表すブランドプロポジション、ブランドの一貫した個性を定義するブランドアイデンティティも顧客理解・価値設計に関わる用語である。マーケティングの手段を組み合わせる考え方をマーケティングミックスと呼び、その一部として品揃えや陳列を工夫するマーチャンダイジングがある。顧客体験全体を設計するCX(Customer Experience)デザインでは、製品・サービス利用時の使いやすさを表すUX(User Experience)、顧客がブランドに抱く愛着である顧客ロイヤルティ、ブランドの独自性を築くブランド戦略、Webサイト訪問者が購入等の成果に至る割合であるコンバージョン率、既存顧客の継続利用割合であるリテンション率が重視される。顧客が製品・サービスと接する過程全体を設計するサービスデザインでは、顧客の行動・感情を時系列で可視化するカスタマージャーニーマップ、典型的な顧客像を具体化するペルソナ、利用者自身をデザインプロセスに巻き込む参加型デザイン、サービス提供の裏側の業務プロセスを可視化するサービスブループリントが用いられる。

2-2 マーケティング戦略

マーケティング戦略は、伝統的な「製品・価格・流通・プロモーション」の4Pに加え、Web施策が独立項目として整理されている。製品戦略では、プロダクトビジョンの定義・共有・進化を起点に、製品が市場に出てから売れなくなるまでを導入期・成長期・成熟期・衰退期という製品ライフサイクルの段階で捉え、衰退期を迎えた製品に新たな価値を加えて寿命を延ばすライフサイクルエクステンション、関連製品群である製品ライン、複数製品の組合せを管理する製品ポートフォリオ、他社製品との差がなくなっていくコモディティ化、新製品が自社の既存製品の売上を奪ってしまうカニバリゼーションが論点になる。価格戦略では、顧客が感じる価値に基づいて価格を決めるバリュープライシング、新製品に高価格をつけて早期に利益を回収するスキミングプライシング、逆に低価格で市場に浸透させるペネトレーションプライシング、需給に応じて価格を変動させるダイナミックプライシング、原価に利益を上乗せするコストプラス法などのその他の価格設定方法、定額課金で継続利用してもらうサブスクリプションモデルがある。流通戦略では、契約により店舗展開するフランチャイズチェーン、複数の流通経路を統合管理するチャネル統合、実店舗とネットの垣根をなくすオムニチャネルが扱われる。プロモーション戦略は、有料で行う広告、購買を後押しする販売促進、報道等を通じたパブリシティに大別される。Webマーケティング戦略は用語数が多く、インターネット広告を筆頭に、許諾を得た相手に配信するオプトインメール広告、Webページ上のバナー広告、利用者の位置情報に基づくジオターゲティング広告、検索結果に連動するリスティング広告、成果が出た分だけ課金される成功報酬型広告、検索結果での表示順位を高めるSEO(Search Engine Optimization)、ランディングページの効果を高めるLPO(Landing Page Optimization)、訪問者が成果に至る割合を示すCVR(Conversion Rate)、成果報酬型の紹介の仕組みであるアフィリエイト、利用者の行動履歴に基づき最適な情報を表示するレコメンデーション、電子看板を用いるデジタルサイネージ、2案を比較検証するA/Bテストまで幅広い。

2-3 マーケティング手法

不特定多数に向けるマスマーケティングに対し、顧客一人ひとりに合わせるワントゥワンマーケティング、顧客との関係を長期的に育てるリレーションシップマーケティング、顧客に直接働きかけるダイレクトマーケティング、複数媒体を組み合わせるクロスメディアマーケティング、本格展開前に一部地域で試す市場テスト(テストマーケティング)、そして企業から顧客へ売り込むプッシュ戦略と顧客から選ばれるよう仕向けるプル戦略という対になる考え方がある。

3. ビジネス戦略と目標・評価

戦略は立てるだけでなく、達成度を測れる形に落とし込む必要がある。企業の目的・目指す姿・価値観を示すMVV(ミッション,ビジョン,バリュー)、ビジネスモデルを1枚の図で整理するビジネスモデルキャンバスを土台に、最終的に達成したい成果を示すKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)、その達成度を日々測るKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)、目標達成の鍵となる要因であるCSF(Critical Success Factors:重要成功要因)を設定し、進捗を定期的に確認するモニタリングを行う、という一連の流れで戦略と目標・評価を結びつける。評価の具体的な手法としては、財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4視点から業績を多面的に測るBSC(Balanced Scorecard:バランススコアカード)、顧客の顕在的な要求(ニーズ)と潜在的な欲求(ウォンツ)を分析するニーズ・ウォンツ分析、競合他社の強み・弱みを把握する競合分析、機能とコストの関係から製品・サービスの価値を高めるバリューエンジニアリング、統計的手法で品質のばらつきを抑え不良率を低減するシックスシグマ、全社的に品質向上に取り組むTQM(Total Quality Management:総合的品質管理)が用いられる。

4. 経営管理システム

戦略を実行に移すには、情報システムによる支援が欠かせない。経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を一元管理し部門横断で最適化するERP(Enterprise Resource Planning)、営業活動を支援し案件管理を効率化するSFA(Sales Force Automation)、組織内の知識・ノウハウを蓄積・共有するKM(Knowledge Management:ナレッジマネジメント)、顧客情報を一元管理し関係強化に活かすCRM(Customer Relationship Management)、原材料調達から生産・物流・販売までを最適化するSCM(Supply Chain Management)、社内の様々な情報システムへの入口を1か所に集約する企業内情報ポータル(EIP)が代表例である。これらはいずれも単独の業務効率化にとどまらず、経営戦略の実行状況を可視化し、次の戦略判断につなげるための基盤として位置づけられる。

---

参考文献

  • IPA「基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2」大分類8「経営戦略」中分類19「経営戦略マネジメント」(p.86-89): https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/omgdg50000005kpe-att/syllabus_fe_ver9_2.pdf

本資料はIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公表する「基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2」(大分類8「経営戦略」中分類19「経営戦略マネジメント」、p.86-89)に基づく自作の解説テキストである。

  • シラバス本文の用語例・分類構成を参照しつつ、解説文・具体例は本資料著者(nomuraya-dojo)の独自作成である
  • 末尾の「オリジナル演習問題」はIPA過去問を模倣・転記せず、本資料著者が独自に作成したものである
  • シラバスそのものの著作権はIPAに帰属する。原文はIPA公式シラバスPDFを参照すること
  • 本資料の利用にあたっては、IPAの著作権・利用規約に従うこと

考えてみよう

既定では正解・不正解の判定はしません。自分のペースで「答えを見る」を。採点してほしい場合だけ「採点してほしい」を押してください。

問1

ある食品メーカーが、既存の製造ノウハウと販売網を活かして、新たに冷凍食品事業に参入することにした。その結果、原材料の共同調達や物流網の共有によって、個別に事業を営むよりも全体のコストが下がった。この現象を説明する経営戦略上の概念として最も適切なものはどれか。

ア コストリーダーシップ戦略

イ シナジー効果

ウ 同質化戦略

エ ダイナミックプライシング

解答:イ

解説: 複数事業を組み合わせることで、単独で営むよりも大きな効果(ここではコスト削減)を生み出す現象はシナジー効果と呼ばれる。コストリーダーシップ戦略は単一事業内で最低コストを目指す競争戦略、同質化戦略は競合の戦略を模倣して優位性を打ち消す戦略、ダイナミックプライシングは需給に応じて価格を変動させる価格戦略であり、いずれも複数事業間の相乗効果を説明する概念ではない。

問2

自社の事業環境を分析するにあたり、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つの観点から内部要因と外部要因を整理するフレームワークはどれか。

ア 3C分析

イ STP分析

ウ SWOT分析

エ VRIO分析

解答:ウ

解説: SWOT分析は、自社の内部要因である強み・弱みと、外部環境の機会・脅威を整理し、事業戦略の立案に活用するフレームワークである。3C分析は自社・競合・顧客の3視点、STP分析はセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングの3段階、VRIO分析は経営資源の価値・希少性・模倣困難性・組織体制の4条件で評価する手法であり、いずれも強み・弱み・機会・脅威という4象限では整理しない。

問3

新製品の発売直後、他社にまだ模倣されていない段階で意図的に高い価格を設定し、価格に敏感でない層から早期に利益を回収する価格戦略はどれか。

ア ペネトレーションプライシング

イ スキミングプライシング

ウ バリュープライシング

エ ダイナミックプライシング

解答:イ

解説: スキミングプライシングは、新製品投入時に高価格を設定し、価格に敏感でない顧客層から短期間に利益を刈り取る(skim)価格戦略である。ペネトレーションプライシングは逆に低価格で市場への早期浸透を狙う戦略、バリュープライシングは顧客が感じる価値を基準に価格を決める考え方、ダイナミックプライシングは需給状況に応じて価格を変動させる方式であり、いずれも「発売直後の高価格設定」を指す語ではない。

問4

経営戦略の実行状況を管理する指標のうち、「最終的に達成すべき成果目標」を示す指標と、「その達成に向けた日々の活動の進捗を測る指標」の組合せとして適切なものはどれか。

ア KGI=重要業績評価指標、KPI=重要目標達成指標

イ KGI=重要目標達成指標、KPI=重要業績評価指標

ウ KGI=バランススコアカード、KPI=重要成功要因

エ KGI=重要成功要因、KPI=バランススコアカード

解答:イ

解説: KGI(Key Goal Indicator)は最終的に達成したい成果を示す重要目標達成指標であり、KPI(Key Performance Indicator)はその達成に向けた活動の進捗を日々測る重要業績評価指標である。両者を混同すると、日々の活動指標だけを追いかけて最終目標の達成度を見失う、あるいは逆に最終目標だけを掲げて日々の進捗管理ができないという事態に陥りやすい。

問5

企業が、営業活動における商談状況や顧客とのやり取りをシステムで一元管理し、案件の進捗管理や引き継ぎの効率化を図りたいと考えている。導入すべき経営管理システムとして最も適切なものはどれか。

ア ERP

イ SFA

ウ SCM

エ EIP

解答:イ

解説: SFA(Sales Force Automation)は営業活動を支援し、商談・案件の進捗管理を効率化するためのシステムである。ERPは経営資源全体を部門横断で一元管理する基幹システム、SCMは原材料調達から販売までのサプライチェーン全体を最適化するシステム、EIP(企業内情報ポータル)は社内の各種システムへの入口を集約する仕組みであり、いずれも営業案件そのものの進捗管理を主目的とするシステムではない。

力試ししたい方は クイズ形式の演習(任意) もあります。読むだけでも十分です。