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ビジネスインダストリ(ビジネスシステム・エンジニアリングシステム・e-ビジネス・民生機器・産業機器)

ストラテジ系 / 経営戦略

この単元の範囲

「ビジネスインダストリ」は、経営戦略の大分類の中で「業界(インダストリ)ごとに情報システムがどう活用されているか」を横断的に扱う中分類である。特定の業種の専門知識を問うのではなく、社内業務・行政・製造・EC・家電・自動車といった幅広い現場に共通して登場する情報システムの種類と特徴、そしてそれを支える技術用語を押さえるのが目標になる。シラバスでは「1.ビジネスシステム」「2.エンジニアリングシステム」「3.e-ビジネス」「4.民生機器」「5.産業機器」の5つの小分類で構成されており、Ver.9系ではビジネスシステムの中に生成AIを含む「AIの利活用」が新設された点が近年の大きな変化である。

1. ビジネスシステム

ビジネスシステムは「企業や行政が業務を回すための情報システム」を扱う。まず社内業務を支えるシステムとして、会計・経理・財務システム、人事・給与システム、営業活動を支援する営業支援システム(SFA)、社内の情報共有を助けるグループウェアやワークフローシステム、リモート会議のためのWeb会議システムがある。財務諸表を機械可読な形式で開示するための標準であるXBRLもここに含まれる。

次に、業種ごとの基幹業務を支えるシステムとして、小売の店頭販売管理・受発注管理・在庫管理・顧客管理、店舗のレジで使われるPOSシステム、工場の生産管理システム、金融機関の金融情報システム、病院の医療情報システムなどが挙げられる。これらを自社開発せずに導入できるERPパッケージ(統合基幹業務システム)や業務別・業種別パッケージも実務でよく使われる。さらに近年の技術動向として、あらゆるモノがネットにつながるIoT(Internet of Things)、現実の設備や工程をコンピュータ上に再現するデジタルツイン、現実世界とデジタル世界を連携させるサイバーフィジカルシステム(CPS)、取引履歴の改ざんを防ぎトレーサビリティを確保するブロックチェーンの活用(スマートコントラクトなど)も出題対象である。

行政・公共分野では、電子政府・電子自治体を実現するe-Gov、自治体間の情報連携基盤であるLGWAN、マイナンバー制度とその窓口であるマイナポータル、災害時に瞬時に警報を伝えるJアラート、電力需給を最適化するスマートグリッドやEMS(エネルギーマネジメントシステム)、位置情報を利用するGPS応用システムやITS(高度道路交通システム)などが用語例として挙がる。誰もが使いやすいユニバーサルデザインや、情報格差を意味するデジタルディバイドといった社会的な視点の用語も含まれる。

Ver.9系で新設された「AI(Artificial Intelligence:人工知能)の利活用」は3つの観点から構成される。第一にAI利活用の原則及び指針で、人間中心のAI社会原則やAI利活用ガイドラインなど、AIを安全に使うための社会的なルール作りを扱う。第二にAIの活用領域及び活用目的で、ある領域に特化した特化型AIと、幅広いタスクに対応できる汎用AIの違い、文章や画像を作り出す生成AI、複数の種類のデータを扱えるマルチモーダルAIなどの用語を押さえる。第三にAIを利活用する上での留意事項で、AIの判断根拠を人間が理解できるようにする説明可能なAI(XAI)、最終判断に人間が関与するヒューマンインザループ(HITL)、学習データの偏りによって生じるアルゴリズムのバイアス、もっともらしい誤情報を生成してしまうハルシネーション、AI生成の偽動画・音声であるディープフェイクなど、AIを業務に導入する際にリスクとして意識すべき用語が並ぶ。例えば、社内チャットボットにAIを導入する場面を考えると、①原則・指針に沿って利用ルールを定め、②生成AIとしての活用目的(問い合わせ対応の自動化など)を明確にし、③ハルシネーションのリスクを踏まえて回答に必ず人が最終チェックを入れる、という流れで3つの観点がつながっていることが理解しやすい。

2. エンジニアリングシステム

エンジニアリングシステムは、製造業における設計から生産までの一連の工程をコンピュータで支援する仕組みを扱う。生産方式には、必要なものを必要な時に必要な量だけ作るJIT(ジャストインタイム)の考え方に基づくかんばん方式、工程のムダを徹底的に排除するリーン生産方式、1人または少人数で製品を組み立てるセル生産方式などがある。工作機械を数値データで自動制御するNC(数値制御)、部品の搬送を自動化する無人搬送車や自動倉庫も生産の自動制御に含まれる。

生産システムの計画・管理面では、工程計画を支援するCAP・CAPP、資材の所要量を計算するMRP、多品種少量生産に柔軟に対応するFMS(フレキシブル生産システム)とその構成単位であるFMCが用語例に挙がる。設計から生産までをコンピュータで一貫して支援する仕組みとしては、設計を支援するCAD、性能や強度を解析するCAE、加工工程を自動化するCAM、製品情報を一元管理するPDM、そして工場全体をコンピュータで統合的に管理するCIMがある。自動車の設計をCADで行い、CAEで強度をシミュレーションし、CAMで工作機械に加工指示を送るという一連の流れをイメージすると、それぞれの略語の役割が整理しやすい。

3. e-ビジネス

e-ビジネスは、インターネットを介した商取引や情報交換の仕組みを扱う。中心となるEC(電子商取引)では、企業間・企業対消費者などの取引形態を表すBtoB・BtoC・CtoC・DtoCといった用語や、オンラインモール・電子入札のような電子受発注の仕組みがある。決済面では、インターネットバンキングやスマートフォンのキャリア決済・非接触IC決済・QRコード決済などのキャッシュレス決済、金融とITを融合したフィンテック、暗号資産(仮想通貨)、中央銀行が発行するデジタル通貨CBDCが用語例として並ぶ。e-ビジネスの進め方としては、需要の少ない商品も種類を揃えることで全体の売上を確保するロングテール戦略、不特定多数に業務を委託するクラウドソーシング、デジタル資産の唯一性を証明するNFTなどが登場する。取引の安全性を確保する留意点としては、本人確認をオンラインで完結させるeKYCや、マネーロンダリング対策・テロ資金供与対策(AML・CFT)ソリューションが挙げられる。

EDI(電子データ交換)は、企業間で受発注データなどを電子的にやり取りする仕組みであり、Webブラウザ経由で行うWeb-EDIや、XMLを使ってデータをやり取りするXML-EDI、財務データの標準であるXBRL、製品モデルデータの国際標準であるSTEPなど、データ形式の標準化が論点になる。ソーシャルメディアでは、SNSやブログのように利用者自身が情報を発信・共有するCGM(消費者生成メディア)、モノや場所を共有し合うシェアリングエコノミー、個人が自らの情報を管理・提供して対価を得る情報銀行といった用語がある。

4. 民生機器

民生機器は、家庭で使われる情報家電やIoT機器を扱う小分類である。基盤となる技術として、機器を制御する小型のマイクロコンピュータ(マイコン)、データ処理をネットワークの端末側で行うエッジコンピューティングやエッジAI、決められた時間内に確実に処理を終えるリアルタイムOS、周囲の環境や位置を検知するセンサーやBLEビーコンなどがある。これらを土台に、コンピュータ周辺機器・OA機器、家庭内の機器をネットワークでつなぐホームネットワーク、身につけて使うウェアラブルコンピュータ、AR・MR・VRの技術を用いたスマートグラスやVRゴーグル、音声でAIアシスタントを呼び出すスマートスピーカー、家庭のエネルギー使用量を可視化・最適化するHEMSなど、暮らしに身近な機器が具体例として挙げられている。

5. 産業機器

産業機器は、工場や社会インフラで使われる産業用の電子機器を扱う。動向面では、機器同士が人を介さず通信するM2M(Machine to Machine)、都市全体をIT技術で最適化するスマートシティ、より広範な課題解決を目指すスーパーシティ、工場全体をIoT・AIで自動化するスマートファクトリー、移動をサービスとして提供するMaaS(Mobility as a Service)が代表的な用語である。具体例としては、産業用・医療用・介護用・災害対応用などの各種ロボット、空撮や配送に使われるドローン、現金を自動で扱うATM、患者の状態を継続的に監視する患者モニタリング装置などが挙げられる。

自動車分野では、コネクテッド(Connected)・自動運転(Autonomous)・シェアリングとサービス化(Shared & Services)・電動化(Electric)の頭文字を取ったCASEという概念が近年の大きなキーワードであり、車両がネットに常時接続されるコネクテッドカーや、自動運転の到達度を段階的に表す自動運転レベルもあわせて理解しておきたい。CASEは、単体の技術用語というより「自動車がどう変わっていくか」という業界全体のトレンドを一語で表す概念として出題されやすい点に注意する。

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参考文献

  • IPA「基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2」大分類8「経営戦略」中分類21「ビジネスインダストリ」(印刷ページ91〜95): https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/omgdg50000005kpe-att/syllabus_fe_ver9_2.pdf

本資料は IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公表する「基本情報技術者試験シラバス Ver.9.2」(大分類8「経営戦略」中分類21「ビジネスインダストリ」、印刷ページ91〜95)に基づく自作の解説テキストである。

  • シラバス本文の用語例・分類構成を参照しつつ、解説文・具体例は本資料著者(nomuraya-dojo)の独自作成である
  • 末尾の「オリジナル演習問題」は IPA 過去問を模倣・転記せず、本資料著者が独自に作成したものである
  • シラバスそのものの著作権は IPA に帰属する。原文は IPA公式シラバスPDF を参照すること
  • 本資料の利用にあたっては、IPAの著作権・利用規約に従うこと

考えてみよう

既定では正解・不正解の判定はしません。自分のペースで「答えを見る」を。採点してほしい場合だけ「採点してほしい」を押してください。

問1

企業が生成AIを用いた社内問い合わせチャットボットを導入するにあたり、AIがもっともらしい誤った回答を生成してしまうリスクに備えて、最終的な回答内容を必ず人間が確認してから利用者に提示する運用ルールを定めた。このとき対策の対象となっているAI利活用上の留意事項はどれか。

ア シャドーIT

イ ハルシネーション

ウ デジタルディバイド

エ ソーシャルエンジニアリング

解答:イ

解説: AIがもっともらしい誤った情報を生成してしまう現象はハルシネーションと呼ばれ、AI利活用上の代表的な留意事項の一つである。人間が最終確認を行う運用(ヒューマンインザループ)は、このハルシネーションのリスクを軽減するための典型的な対策にあたる。シャドーITは会社が許可していない私物端末・サービスの業務利用、デジタルディバイドは情報格差、ソーシャルエンジニアリングは人の心理的な隙を突く攻撃手法であり、いずれもAI固有の留意事項ではない。

問2

多品種少量生産に柔軟に対応するため、生産設備の構成や加工順序をプログラムによって切り替えられる生産システムの略称として、最も適切なものはどれか。

ア MRP

イ FMS

ウ CIM

エ POS

解答:イ

解説: FMS(Flexible Manufacturing System:フレキシブル生産システム)は、複数の工作機械や搬送装置を組み合わせ、プログラムの切り替えによって多品種少量生産に柔軟に対応できる生産システムである。MRPは資材所要量計画、CIMは工場全体をコンピュータで統合管理する仕組み、POSは販売時点で商品情報を記録する店舗システムであり、いずれも「多品種少量生産への柔軟な対応」を主目的とする語ではない。

問3

インターネットバンキングやQRコード決済のように、金融サービスと情報技術を融合させることで生まれた新しい金融サービスの総称として、最も適切なものはどれか。

ア EDI

イ CDN

ウ フィンテック(FinTech)

エ CIM

解答:ウ

解説: フィンテック(FinTech)は、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、インターネットバンキングやキャッシュレス決済、暗号資産など、ITを活用した新しい金融サービス全般を指す。EDIは企業間の電子データ交換、CDNはコンテンツ配信を効率化する仕組み、CIMは工場の生産管理を統合する仕組みであり、いずれも金融サービスそのものを表す用語ではない。

問4

自動車業界において、コネクテッド(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェアリングとサービス化(Shared & Services)、電動化(Electric)という4つの技術トレンドの頭文字を組み合わせて表す概念はどれか。

ア MaaS

イ CASE

ウ ITS

エ M2M

解答:イ

解説: CASEは、Connected・Autonomous・Shared & Services・Electricの頭文字を取った概念で、近年の自動車業界の技術トレンドを包括的に表す用語として広く使われている。MaaSは移動そのものをサービスとして提供する考え方、ITSは道路交通全体を高度化する仕組み、M2Mは機器同士が人を介さず通信する仕組みであり、CASEを構成する4要素そのものを表す語ではない。

問5

証明書失効リストのような認証局の仕組みではなく、企業間で受発注データなどの取引情報を標準化された電子データとしてやり取りする仕組みを何と呼ぶか。

ア EDI

イ CRM

ウ SFA

エ ERP

解答:ア

解説: EDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)は、企業間で受発注データや請求データなどの取引情報を、標準化された電子データの形式でやり取りする仕組みである。CRMは顧客関係管理、SFAは営業支援システム、ERPは企業の基幹業務を統合的に管理するパッケージであり、いずれも企業間のデータ交換そのものを目的とした仕組みではない。

力試ししたい方は クイズ形式の演習(任意) もあります。読むだけでも十分です。